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クラス・同好会だより
ルーマニア便り
野間春海(法学部吉永ゼミ、Xクラス)

 教会から殆ど音楽のように聞こえる祈祷の調べとともに司祭が厳かに歩み出てきた。4月11日(日曜)夜中の零時きっかりだ。これからルーマニア正教の復活祭が始まろうとしている。教会の前に大勢集まった人たちは皆キャンドルを携えてきており、初めに教会のキャンドルから受けた火をリレーしつつ皆のキャンドルに灯されて行く。夜空に響き渡る司祭のお祈りに続いて、厳かな讃美歌が全員で唱和される。20分後に復活祭の式は終了し、司祭はまた教会内に戻って行く。皆もキャンドルを持ち家路につき、家の玄関までその火を灯し続けることができたら幸運が来るという。

 これはたまたまルーマニアに出張していたところ、復活祭の直前だったので、現地法人のマネージャーが一緒にどうかと誘ってくれて首都ブカレスト市内の教会に行った時の模様です。そのあとも彼の家で復活祭の特別料理をご馳走になった。ルーマニアではこの復活祭が1年で最大の行事で、クリスマスより大事だという。敬虔な信者でなくとも復活祭の日は教会に行く。彼も教会に行くのはこの日だけ。若い人たちも大勢教会に来ていて、式の後、パーティーに行くのが通例で、学校も深夜にパーティー会場を提供するほど。ルーマニア正教はギリシャ正教の流れをくみ、ルーマニアではいわゆる信者が9割近くいるという。敬虔な信者が教会の前を通る度に胸に十字を切っている姿もよく見かける。現地法人の社員でもそういう人が多い。この十字の切り方も上下右左とカトリック教徒の上下左右と違うのに気付く。また復活祭の前40日間は肉、魚、酒などは控えねばならず、復活祭直前の金曜はブラック・フライデーと呼ばれとりわけ禁欲しなければいけない。身を清め、キリストの復活を祝うためだ。社員の一人もお土産に持っていったチョコレートにミルクが入っていないかどうか確かめていたほどだ。口の悪い仲間はよほど悪いことをしているので罪を償う必要があるのだろうと冷やかしていた。復活祭の特別料理にラム(子羊)は欠かせないといい、彼の家でもラムを食べるのはこの日だけ。あとマッシュルーム入りのパン、胡桃入りのパンなど普段食べないものが多い。いつも乾杯はルーマニア語でノロックというが、この日は一人がクリストズアウンビアーテ(キリストが復活した)と言い、周りがアデバラートアンビアートゥ(確かにキリストは生まれ変わった)と応える。

初めてのルーマニア正教の復活祭参加だったが、人生の垢にまみれた僕でさえ若干たりとも神聖な気持になった。ルーマニアに来初めて6年目になるが、東欧唯一のラテン系ということもあって皆明るく、屈託がないので仕事も楽しくやりやすい。景気も年々好転しており、近頃は新緑の街路樹の中、あちこちに新築のビルや豪華な家も立ち並ぶ。あいにくジプシーが多いのも事実だが、ジプシーはROMAとも呼ばれるため、ルーマニア人は全てジプシーだと勘違いしているヨーロッパ人が多い。これはルーマニア贔屓の僕にとって非常に残念なことである。

では皆さんラレヴェデーレ(さようなら)、清らかな日々を・・・

2004年4月記
(了)
ルーマニア復活祭
ブカレスト市街
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