12月初め業務引継ぎのためウクライナを8日間訪問。日本でもだいぶ報道されているので周知のことであろうが、11月の大統領選の決選投票の結果を巡り混乱が広がっている真っ只中のキエフに降り立った。与党候補で親ロシア派のヤヌコビッチ首相の陣営が大規模な不正を働いたことに抗議し、改革派の野党候補で西欧志向のユーシェンコ元首相を支持する国民が立ち上がったところであった。
首都キエフでは独立広場を中心に目抜き通り一杯に連日のデモ。雪の中にもかかわらず昼夜にわたり百万人を超すという想像を絶する規模だ。旗、プラカード、コート、マフラー、リボン、帽子など野党カラーのオレンジ一色だ。「YES,
ユーシェンコ」と書いた旗を振り、さまざまなミュージックバンドを交えて「ユーシェンコ、ユーシェンコ」のシュプレヒコール。ときには現大統領の「クチマよ去れ」と連呼するも、参加者は手にバラの花を持ち、笑顔を絶やさない穏やかな行進。歴史始まって以来の大規模なデモで、正に「無血革命」だ。小生がキエフで会った人全員がデモに参加しているので、小生もちょっと加わってみたが、人、人の波で前に進めないほどであった。また訪れた家では地方からテントを持って参加している人達のために差し入れする食べ物の料理に大忙しであった。
最高裁は選挙結果に不正があったとして選挙結果の認定を否決。裁判官には家族を殺してやるなどとの脅しが頻繁にあったにもかかわらず正しい判断を下したのには正に驚き、敬意を払いたい。今までは野党候補ユーシェンコ元首相の毒殺計画、メディア統制、腐敗した政治、不透明な行政など悪い面が目立っていたが、ウクライナの良い面を改めて見直したものである。
キエフから黒海沿岸のオデッサに向かったが、オデッサは与党の地盤。ここでは与党カラーのブルーのリボンを車に掲げての行進に出くわした。
ウクライナでは駐在員事務所を1年前に開設し、今度は現地法人に切替え、人員も大幅に増やす予定だったが、しばらく見合わせ、政治的に安定してから実行に移すこととした。
ウクライナは日本の1.6倍60万km2の国土と5千万弱の人口を擁する東欧の大国で、東欧に6年以上携わってきた自分にとって、このウクライナに一日も早く安定した民主政治が敷かれることを願って止まない。 |