刑事訴訟法を改正する法律案の主な改正点 第一 起訴 第二 公判 第三 審級 第四 その他 概要 第一 起訴について (1)起訴と同時に証拠を全部裁判所に提出していた從來の制度を改めて、証拠は、原則として公判において提出すべきものとしたこと。 (2)起訴状の書き方に嚴格な方式を定め、仮に基礎となる事実が同じであつても、起訴状に記載された事実及び罪名以外の事実又は罪名で有罪の言渡をすることはできないものとしたこと。 第二 公判について (1)起訴状を前以て被告人に送達するものとしたこと。 (2)一旦指定された公判期日の変更には愼重な手続を経なければならないものとし、審判の迅速化を期したこと。 (3)軽微な事件以外は、必ず弁護人を必要とするものとしたこと。 (4)いわゆるアレインメントの制度は採用しないものとしたこと。 (5)いわゆる交互尋問制を法文上に規定することをやめ、運用によつては、行い得るものとするに止めたこと。 (6)從來のような被告人尋問の方法を改め、被告人に默祕権を認め、ただ必要があれば被告人の任意の供述を求め得るものとしたこと。 (7)公判廷外の自白は勿論公判廷における自白でもそれだけでは、有罪としてはならないとしたこと。 (8)聽取書等の証拠能力を著しく制限し、例外的に証拠とし得る場合を詳細に規定したこと。 (9)禁錮以上の刑について実刑の言渡があつたときは、保釈は一旦その効力を失い、更めて、條件を定め保釈するかどうかをきめるものとしたこと。 (10)無罪、執行猶予等の言渡があれば、勾留中のものは直ちに釈放されるものとしたこと。 第三 審級について (1)一審を地方裁判所及び簡易裁判所とし、二審を高等裁判所とし、三審を最高裁判所としたこと。 (2)控訴審を覆審とせず、一審の裁判の当否を審査し、控訴の理由があれば、原則として一審に差し戻し又は移送すべきものとしたこと。 (3)控訴の申立には、控訴趣意書を提出すべきものとし、その方式を詳細に定めたこと。 (4)上告理由を憲法違反及び判例違反としたこと。但し、法令の解釈に関する重要な事項を含む事件については、特別に上告を受理できるものとしたこと。 (5)なお、上告審で、法令違反、量刑不当、事実誤認等について著しく正義に反する場合にも原判決を破棄し得る途を開いたこと。 (6)上告審の判決後十日間に限り、判決訂正の申立を認めたこと。 (7)附帯上訴の制度を廃止したこと。 第四 その他 (1)弁護について イ、被疑者にも廣く弁護人選任権を認めたこと。 ロ、主任弁護人の制度を認めたこと。 ハ、國選弁護人を廣く認めたこと。 ニ、拘禁中の被疑者又は被告人と弁護人との接見を自由としたこと。 (2)確定事件の記録を一般に公開する途を開いたこと。 (3)時効の中断の制度をやめ、起訴後は時効の進行は停止するものとしたこと。 (4)勾留した場合には、弁護人又は親族に通知するものとしたこと。 (5)保釈を許さなければならない場合を認めたこと。 (6)裁判官は、自ら差押又は搜索のため裁判所外に出張せず、必ず令状を発して、他の者に執行させるものとしたこと。 (7)新に身体檢査令状の制度を設けたこと。 (8)証人の不出頭及び証言、宣言拒否に対する制裁を強化したこと。 (9)新に証拠保全の制度を認めたこと。 (10)檢察官と司法警察職員との関係については、檢察官に一般的指示、搜査の協力を求めるための一般的指揮及び自ら搜査する場合に補助させるための指揮の三種の権限を認め、これに從わない者に対して懲戒又は罷免の訴追をなし得るものとしたこと。 (11)尊属親に対する告訴の禁止を廃したこと。 (12)賭博罪及び勾留科料の罪の時効期間を延長したこと。 (13)いわゆる人権蹂りん事件について裁判所に檢察官の不起訴処分の当否を審査する権限を認めたこと。 (14)略式命令を被告人に異議のない場合で五千円以下の罰金及び科料を科すべき場合に限つて認めたこと。
|