第8章 天候状況に応じた走り方

悪天候時はなるべく走らないほうが賢明ですが、合宿中などはそうも言ってられません。猛暑や雨天時、夜間などは危険が大きいこともさることながら、 体調を崩してしまいがちなのでしっかりと対処しましょう。

A.晴天

春先のぽかぽかした日や秋の涼しい日は本当にサイクリング日和で気持ちいいが、夏場は真剣に対策しないと本当にしゃれにならない。熱射病や脱水症状は死にいたる可能性だってあるのだ。
例年夏合宿は北海道だが、北の大地とて日中はかなり暑い。しっかりした対策が必要である。

@水分補給
ただでさえ暑いのに、自転車は大量に汗をかくスポーツである。 特に夏合宿中は一日2〜3Lは当たり前。常に1Lくらいは飲み物を携帯し、こまめに水分補給すること。のどが渇く前に飲むのがポイント。
スポーツドリンクを薄めたものが、吸収がよく適度に糖分も摂取できるのでおすすめ。

A暑い、てか熱い!
アスファルトの反射熱や自動車の排気熱で道路上は気温よりもかなり高くなることがある。決して無理をせず休憩をはさみ、やはり水分補給をまめに行うこと。
気化熱で体温を下げてくれるので水を浴びるのも有効。浴びる用に一本ペットボトルに水を詰めておくといい。
また、直射日光を頭に浴びると日射病になるので、蒸れて不快でもヘルメットはかぶっていた方がよい。

※テロリストのみなさんは特に熱中症には注意してください。

B焼ける!
なめてると本当に火傷します。むしろ焦げます。夏の紫外線は大敵!曇りの日でも紫外線は強いのだとか。男でも日焼け止めクリームは必須。

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B.雨天

雨の日、一番危険なのはスリップと集中力の低下である。事故が起きやすい環境なので、常にスピードは控えめに。雨が降ると濡れるし寒いし走るのは憂鬱だろうけど…。まあ、そんなに嫌がらずに走るときは走ろう。

@路面に注意
濡れた路面は非常に滑りやすい。特に道路の白線、マンホールや線路などの金属部分はなるべく踏まないようにし、その上では絶対にブレーキをかけないこと。
また、下り坂は非常に転倒しやすいのでかなり減速したほうがよい(ブレーキのかけっぱなしは×)。

Aスピードを控えめに
リムやブレーキシューが濡れるとブレーキの効きは非常に悪くなる。雨のときはスピード控えめで走り、止まる際は早めに減速すること。車間距離も普段より大きくとったほうがよい。
また、雨水に含まれる泥が摩擦を大きくするため、ブレーキシューはすごい勢いで消耗してしまう。峠の下りなどで雨に降られると、ブレーキシューは一発でダメになることもある。合宿系のプランでは常にブレーキシューの替えは持っておくようにしたい。

B視界が悪くなる
雨天時は視界がかなり悪くなる。前の自転車が跳ね上げるしぶきも大きく視界を奪う。泥が一緒に飛んでくるので、特にコンタクトレンズをしている人にはつらい。車間距離をいつもより広くあける、交互にずれて走る(第2章AD)などして水しぶきを避けよう。
雨水でコンタクトレンズがずれた時、眼鏡の水滴を拭いたいときはトップに申出て一時停止してから行う。サングラスはただでさえ暗い視界がさらに暗くなるので避けたほうがよい。
そして、見えにくいのは車のドライバーとて同じ。雨天時は前後のライトをつけるように。目立ちやすい色の雨具やヘルメットもこちらの存在をアピールする格好の目印となる。なお、峠では霧が発生しさらに視界が悪くなることが多いので、上りでもフリーをかけず班で固まって走るようにすること。



C寒さにも注意
雨に濡れると徐々に体温が奪われ、疲労がたまっていく。体が冷えると関節や筋肉を痛めやすくもなってしまう。それなりに値段は張るが、雨具だけはいいものを買っておいた方がよい。夜間の防寒着としても大活躍するし、卒業してからもずっと使えるので絶対に買うべき。
雨具を着て自転車に乗ると裾がチェーンに巻き込まれたりボトルにひっかかったりして危ないので、バンドで止めるかまくりあげておくこと。

D走り終わったら
雨天の中を走ったら、その日のうちに汚れと水滴を拭い、必要に応じて注油しておく。特に、錆が発生しやすいチェーン回り、ブレーキシューのカスがついたタイヤのリムの手入れは欠かさずに行うこと。ブレーキがいつもより多く摩耗しているので、ブレーキの調子もチェック。

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C.夜間

ミッドナイトランを筆頭に、夜間走行は無駄にテンションがあがって楽しいのだが、圧倒的に視界が悪くなるので慎重な運転が必要。見えにくくなるのは車のドライバーも一緒。ドライバーにとって夜中に自転車が走っていることは想定の範囲外なので心理的にも気付きにくい上、夜の車はとばしがちである。気付いてもらえるようにとにかく目立つこと。
@ライト
前照灯、尾灯ともにつけ忘れがないか注意。無いと法律的にも走行が認められていない。後ろも反射板だけでは非常に不安なので、夜間を走ると分かっているのであればテールライトは必携。
ライトは前を照らすよりも車に対し存在をアピールするのが主な役目。多くのジョイナサーがLEDライトを使っているが、よっぽど暗い場合を除いてライトは点滅させておくべき。



A反射板
また、繁華街など非常に明るいところでは、背景が保護色となってしまい逆に自転車は見えにくくなる。このときは、むしろ反射板のほうが目立つのでライトと併用するのが最も安全である。

B目立つ服を
服装はできるだけ目立ちやすい色にし、ヘルメットもかぶった方がよい。ドライバーにとって夜中に自転車が走っていることなど想定の範囲外である上、夜間は飛ばしがち(=視野がせまくなる)なので、気付いてもらえるようにとにかく目立つこと。

Cスピードは控えめに!
暗いと遠くや路面の状況把握ができないので、何が起こっても対処できるように日中よりも控えめのスピードで走るようにすること。



D意識はしっかり!
寝不足によって走行中はぼーっとしてしまいがち。休憩を頻繁にはさみ、コーヒーを飲むなりガムを噛むなりして注意力を維持するよう努力すること。



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あとがき

本稿は、これまでJOINUSの活動内で慣習的に行われてきた自転車走行ルールを成文化・体系化し、全部員が同じ走行ルールを共有することでJOINUSの活動の安全性を一層高めることを目的として執筆しました。

序文にも述べましたが、自転車には危険がつきものです。

私たちは楽しむためにJOINUSに参加し、自転車に乗っているはずです。ですが、ひとりでも部員が事故に巻込まれ、怪我や最悪死亡してしまっては、楽しめるはずもありません。こんなことは考えたくもない話です。しかし我々はこれらの可能性を軽視せず、真摯に考え対策する必要があります。楽しむ大前提として安全が何よりも最優先されるということを、私たちは決して忘れてはなりません。

ところで、筆者が入部した頃に比べJOINUSでの安全走行に対する意識は着実に向上しています。ただ一方で、危険に臆病になるあまりか「無理のないプラン」がスタンダードになり、「定番プラン」や「走らないプラン」ばかり目立つようになるなど、楽しさの追求が少々おざなりになっていると感じることもあります。

馬鹿なこと、楽しいことをどんどん追求する。でも、絶対に事故は起こさない。

そのためには、「走れる・走れない」や「新入生・上級生」を問わず、個々人が危険要素を認識し自らの判断で対処することが大切なのではないかと思います。人数が急速に増えている今日のJOINUSにおいては確実に事故のリスクは高まっています。走行ルールに限らず、整備技術しかり、プランナーしかり。一部の人に頼ってはいけません。自分や周囲の人が安全に楽しめるためにできることを、ひとりひとりが考えてみてください。

本マニュアルは基本的なルールや事例の紹介にすぎず、また文章で表現できることには限界もあるため、全ての状況を完全に網羅しているわけではありません。道路上の危険は数え上げればきりがないですし、テールの役割や自動車への牽制・手信号などはいくつものパターンがあります。
実際に走る中でどのような危険が潜んでいるかに注意し、その都度自分で対処方法を考え、常に班員や第三者の安全を最優先にした行動を心がけるようにしてください。また、走行経験の中で身に付けた技術や知恵はぜひ積極的に後輩たちへ還元していってください。

一人でも多くのジョイナサーにとって、本マニュアルが「考える」きっかけとなれば幸いです。


※このマニュアルの作成にあたっては、多くのジョイナサーの協力によって議論や校正が重ねられ、インターネットでの公開にまでこぎつけることができました。末筆ながら深くお礼申しあげます。また、中には従来行われてきた走行ルールを排し、筆者の主観・実体験に則して新たなルールを提起した箇所も多くあります。現実の走行にそぐわない記述があればそれは一重に筆者の見識不足が致すところであり、後代においても随時見直し・改訂を加えてこのマニュアルを「完成」させていってください。

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