皆さん、新しい年をさまざまな思いと大いなる希望をもって迎えられたことと存じます。
俳人高浜虚子は新しい年を『去年今年 貫く棒の 如きもの』と詠んでいます。新年だからと言ってことさら何か変わるものでもない、昨日を去年と言い、今日を今年と言うだけで、この2日の時の移ろいはそれを貫く棒のようなものだ、との意味です。虚子の達観した思いが伝わってきます。
確かに新しい年が来たからと言って何かが劇的に変わるわけではありません。自らの信条や生活スタイルが1日経ったらガラッと変わった、という話は余り聞いたことはありません。ただ、わたし達を取り巻く現状に未来の光芒が見出せず、またその状況を認識していながら何ら具体的な第一歩を踏み出せないまま時を過ごしている相当数の者が、新しい年を「何かが変わる」、あるいは自らの意思で「何かを変える」きっかけとしにしたいと考えているのも事実です。
私の生まれ故郷は北海道の小樽です。しんしんと雪が降る中迎えた新しい年の朝には、それこそ昨日まで雪の上に残っていた人々の足跡や馬橇の通った跡の轍がすっかり積もった雪の中に消し去られ、視覚的にも今日は特別な日であることが実感できました。去年1年間の嫌なことがこの日を境に総て消去され、今日から新しい1日が始まるのだなと子供心にも思ったものです。古いかもしれませんが、やはり私は今でも新しい年の始まりは「今年こそ」の気持ちで迎えたいと願っています。
昨年3月11日の東北大震災は今なお拭い去れない大きな傷跡を残しましたが反面、私たちに自分たちが日本人であることの誇りも教えてくれました。外国メディアが絶賛した被災者方々の規律正しい行動や困難の中で耐え助け合う姿、遠くから仕事を終えて駆け付けた若いボランティアの人たち、誰もが消えつつあると思っていた良き日本人の他人を思う気持ちがまだ残っていることを強く実感させてくれました。昨年末に選ばれた今年の漢字が『絆』であったことに素直に頷けます。
本年より向こう4年間、同期会の代表世話役を務めさせて頂きます。皆さんたちの多くの方が職場から離れ、趣味の仲間や中高校時代の学友、地域の人たち等、新しい友人との絆を作っていることでしょう。私は皆さん方にこれから70歳を迎える今、同じ時期に同じ学び舎で青春時代を過ごした一橋大学の仲間と是非もう一つの『絆』を作って欲しいと切に願っています。外形こそ皆、爺さんになりましたが一度言葉を交わすと40数年前のあいつがあの時の顔のままでそこにいます。学生時代面識がなかった連中も、友だちの友だちでアット言う間に自分の友だちになってしまう、そんなマジックが3ケ月毎に開かれる例会や趣味を同じくする仲間同士の愛好会(「ゴルフ会」、「STC
会<温泉(SPRING)とトレッキング(TREKKING)を楽しむ会>」、「囲碁会」、「旅行会」等)で起きるのです。
これからの4年間、各クラス幹事の方々を通じてお願いもしますが、まだこれらの会に出たことがない人、前に顔を出したことがあるがその後何となく足が遠のいてしまった人、こういう方々が一人でも多く定例学年会あるいは趣味の愛好会に顔を出して頂けることを望みます。
新しい年を機に“会えてよかった”を実感し、同期全員で新しい『絆』を作ってみませんか。
記: 代表世話人 小杉 俊二(Aクラス) |